東京高等裁判所 昭和27年(ラ)181号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実〕東京地方裁判所は本件相手方を債権者として抗告人外五名を債務者とする同庁昭和二十六年(ヨ)第一五七三号仮処分申請事件につき同年五月三十一日「債務者らは債権者の別紙表示の物件に対する占有使用を妨害してはならない。債権者の委任する前橋地方裁判所執行吏は右命令の趣旨を公示するため適当の方法をとらなければならない」との仮処分決定をし、相手方は右決定正本にもとずき同年六月一日これが執行をした。ところがその後東京地方裁判所は抗告人を債権者として相手方を債務者とする同庁昭和二十七年(ヨ)第一七一号仮処分申請事件につき同年一月二十一日「債務者の別紙表示の建物(前仮処分の目的物件の一部)に対する占有を解いて、債権者の委任する前橋地方裁判所執行吏にその保管を命ずる。執行吏はその現状を変更しないことを条件として債務者にその使用を許さなければならない。但し、この場合においては執行吏はその保管に係ることを公示するため適当の方法をとるべく、債務者はこの占有を他人に移転し、または占有名義を変更してはならない。債務者は右建物に対する賃借権を売買讓渡その他一切の処分をしてはならない。」との仮処分決定をし、抗告人は右決定正本にもとずき同年一月二十三日これが執行をし、右建物は執行吏の保管するところとなつた。
相手方は前記二個の仮処分決定は互に相牴触するものであり、執行吏が第二次の仮処分の執行をしたのは違法で、これは執行の方法を誤つたものであるとして民訴五百四十四条に則り右第二次の仮処分の執行を許さない旨の裁判を求めたところ原審はこれを認容した。
〔判斷〕抗告審は前示二つの仮処分は互に相牴触せずと判断し原決定を取消し、執行方法異議の申立を却下した。判示は次の通りである。
右第一次の仮処分の趣旨は抗告人らが実力をもつて相手方の占有使用を妨害することを禁ずるもの、すなわち相手方の占有使用の事実状態を保全するだけであつて、それ以上に及ぶものでないことは、右仮処分決定の内容自体によつて明らかであり、第二次の仮処分は相手方の占有を解き執行吏の保管に移すのではあるけれども、相手方が現状のまま使用することを許し、かつ相手方の目的物件に対する現在の支配状況の変更を禁ずるものであるから、相手方の占有を解いて執行吏の保管に移す点にだけ目をつけると第一次の仮処分とかちあうように見えるけれども、これは目的物件の現状の保存を徹底させるための方法に過ぎず、この第二次仮処分命令の定める処分の全体をみるならば、その実貭においては右第一次仮処分によつて保全しようとするところ、すなわち相手方がこれを自ら現状のまま使用するという事実状態となんら相妨げないものであるから、第二次の仮処分は第一次の仮処分とはその趣旨内容において牴触するものとは解せられない。またその執行方法においても、第一次の仮処分は抗告人らに不作為を命ずる決定書の送達と、この旨を現場において公示する執行吏の処分とによつてその内容の実現をみたすものであるに反し、第二次の仮処分の執行は抗告人の委任した執行吏が仮処分決定の命ずるところに従い目的物件を執行吏の保管とし現状不変更を条件として相手方にその使用を許す処分とし、その旨の公示方法をとることと、相手方に不作為を命ずる部分については決定書を送達することにより、その内容の実現を見るものであつて、両者の執行方法はなんら牴触することなく両立並存し得るものであり、第二次の仮処分の執行によつて第一次の仮処分の執行を排除変更する関係になるものということはできない。